記事一覧

十段3名VS七段において、七段はどの程度善戦するか

1 はじめに

 ことの発端は、中の上氏(ツイッターのアカウントは @osakei1048576 )氏の次のツイートである。

(以下、ツイートの引用、大元のURLは https://twitter.com/osakei1048576/status/822171172934561792 )
天十九 vs 七 だと、計算上のラス率は32~36%くらいのどこかになるんじゃないかな。別の数字だと、平均順位が2.8、期待ptは、-12くらい。これは凄まじい数字で、「精一杯打っても、平均100試合強でチャオらされる」くらいの、メンツの厳しさ。
(引用終了)

 これを見手思ったのは、「平均順位2.8、ラス率32%~36%のロジックはなんだろう?あるいは、この数値は正しいのだろうか?」であった。
 そこで、この点について検証してみる。
 なお、「天十九」とあるが、めんどくさいので「十十十七」とする。


2 『科学する麻雀』の記載を用いた場合の平均順位の予測

「実力差によって直接対決が勝率がどの程度になるか」については『科学する麻雀』(講談社現代新書、とつげき東北著、20014)に次の記載がある。

(以下、本文の引用)
「平均順位0.1の改善が1試合あたりの勝率2.3%上昇にあたる」
(以下、引用終了)

 つまり、平均順位0.1弱い者と直接対決をすれば勝率は50%から52.3%になるらしい
 3家毎の勝率が分かれば、平均順位は求められる(4から3家それぞれに対する勝率の数値3つを引けばいい)。
 そこで、七段と十段の平均順位の差から平均順位を見積もってみよう。

 鳳凰卓における見かけの段位七段、見かけの八段、見かけの九段、見かけの段位十段、見かけの天鳳位の平均順位は次のとおりとなった。
(なお、牌譜解析の対象期間は2009年2月20日~2015年12月31日、クイタン赤アリの東南戦のみを対象)

 七段 2.511 
 八段 2.486
 九段 2.47
 十段 2.443
 天鳳位 2.444

 七段と十段の平均順位の差は0.068である。
 すると、十段の勝率は

 0.068 × 2.3 ÷ 0.1 = 1.564

 より50%から51.6%となる(七段の勝率は48.4%となる)。
 すると、七段の平均順位は

 4 - 0.484 × 3 = 2.548

 となった。
 (対十段三人の)七段の平均順位は概ね2.55である
 順位分布(1位率から4位率まで)が等差数列になるとするなら、ラス率は26.5%である。
 中の上氏の予想とは大きく異なる。

 もっとも、この理論の方が間違っている可能性もある。
 そこで、擬似麻雀シミュレーションによって平均順位を予測してみよう。


3 擬似麻雀シミュレーションによる検討

(1)仮定
(めんどい場合、この部分は全部読み飛ばしてよい)

『科学する麻雀』にある実力比較の手法に基づいて平均順位の予測を行ったが、これだけでは心もとない。
 そこで、擬似麻雀シミュレーションを用いて七段が十段3名と戦ったときの平均順位を予測してみようと思う。

 そのためには、七段平均や十段平均の挙動を設定する必要がある。
 そして、そのために動かせるパラメータは「和了率」と「放銃率」だけである。
 そこで、このシミュレーションを行うにあたっては次の仮定(強い仮定)を置くことにする。

① 七段、十段とは見かけが七段の者の平均、見かけが十段の者の平均とする。
② 七段、十段の実力は平均順位によって決まるものとする(よって、七段の実力は平均順位2.511であり、十段の実力は平均順位2.443)。
③ 七段、十段のパラメータは実力が平均順位を反映するように和了率と放銃率を調整する
(つまり、七段と十段の能力は和了と放銃のみが違うものとし、その他の能力は均一であるものとする)
④ 平均順位を移動させる際、和了率と放銃率を変化させる割合は、2:-1とする
(つまり、実力を変えるために、和了1%上げた場合、必ず放銃率を0.5%下げる、このバランスを維持しながら、平均順位を変動させる、つまり、不自然に強い場合を考慮しない)。
 
 ③と④は擬似麻雀シミュレータの性能上要求される強い仮定ではあるが、概ね問題ないだろう。
 以上の条件の結果、七段・八段・九段・十段の和了率と放銃率は次のようになった。

 全体のパラメータ(この数値を基準に七段から十段のパラメータを変える)
 親和了率 23.415% 子和了率20.475%、
 親放銃率13.445%、親放銃率12.375%

 七段 和了率を0.2%下げ、放銃率を0.1%上げる
 八段 和了率を0.25%上げ、放銃率を0.125%下げる
 九段 和了率を0.5%上げ、放銃率を0.25%下げる
 十段、和了率を1%上げ、放銃率を0.5%下げる
 
 なお、七段は南親とする
 南親の結果であれば飛びアリやオーラス和了・聴牌やめのルールの影響を受けにくいからである。

(読み飛ばしていいのはここまで)
(2)結果

 シミュレーション結果は次のとおりである。

FC21701201.jpg 

 まず、和了率・放銃率のパラメータの設定(変化)によって、ちゃんと平均順位が移動したか(実力に反映しているか)どうかを確認しよう(そもそもそれが成り立たなければ、シミュレーションがおかしいことになる)。

 見かけ七段の平均順位は牌譜解析結果によると2.511であるが、このシミュレーション(自分は七段、その他は平均)によると見かけ七段の平均順位は2.519となった 
 見かけ八段の平均順位は牌譜解析結果によると2.486であるが、このシミュレーション(自分は七段、その他は平均)によると見かけ七段の平均順位は2.923となった 
 見かけ九段の平均順位は牌譜解析結果によると2.47であるが、このシミュレーション(自分は七段、その他は平均)によると見かけ七段の平均順位は2.476となった 
 見かけ十段の平均順位は牌譜解析結果によると2.443であるが、このシミュレーション(自分は七段、その他は平均)によると見かけ七段の平均順位は2.448となった。
 いずれもシミュレーションと実測値のずれは平均順位0.01を下回っている
 よって、今回のパラメータ設定は妥当であると言える


 以上のことを確認したうえで、十段3名VS七段の平均順位を調べてみよう。
(見かけ)七段の平均順位は2.57、ラス率は26.9%となった。
 安定段位なら5.8である。


4 考察

『科学する麻雀』にある勝率予測の理論に従うと、対十段3名の七段の平均順位は2.55となった
 他方、擬似麻雀シミュレーションによる順位予測に従うと、対十段3名の七段の平均順位は2.57となった。
 両者はおそらく別個のモデルを用いていると思われ(少なくても前者の予測に擬似麻雀シミュレーションが関与しているとは考えられない)、その一方で、両者は独立して2.55近辺の平均順位を予測した。
 以上を考慮すると、この結論はかなりの確率で信用できるのではないか、と思われる。
 つまり、平均順位は2.57程度である。
 よって、中の上氏の結論は(私の仮定①を前提とするなら)誤りということになる。


 何故こんなことになったのだろうか?
 理由としては2つある。

 まず、「十段に対するイメージ」の違いが考えられる(仮定①に強く影響する部分)。
 私は「見かけが十段であるもの全員」として平均順位を予測した
 他方、仮に「ツイッターで対外的に活動している者の見かけ十段である間の平均」とかにしたらどうだろう。
 多分、平均順位は数値的に下がる(成績としてはよくなる)のではないだろうか?
(イメージがつかないものは、【罪歌】氏、ゼロ氏、ゆーせー氏、歴代天鳳位12名らが十段在位していたときの平均順位が全十段の平均順位と比べてどうなるかイメージしてみよ)
 そう考えれば、中の上氏が平均順位2.8(これは七段の十段に対する勝率に換算すれば40%になる)になるのはあながち不当になるとは思えない。
 中の上氏の数値が外れた原因はこの辺にあるかもしれない。


 もう一つは全十段の平均はそれほど勝ちまくっているわけではない、天鳳の強者(安定段位約9.0)といっても勝ちまくっているわけではないということが考えられる。
 見たとおり、見かけ十段の1試合あたりの平均順位は2.44であり、平均順位2.4よりも数値的に高い。
 順位分布が等差数列だと考えると、平均順位2.44のトップ率は約26.8%、連帯率は約52.4%である(ラス率は23.2%)。
 そう考えると、「見かけが十段であるだけならばそんなに勝ててない」ということも十分考えられる。
 また、1000試合打っている者における鳳凰卓の平均順位は2.4~2.6あたりに散らばっている。
 安定段位9.2(平均順位2.4)でもトップ率は28%、連帯率は54%である。
 そう考えれば、安定段位が高いとはいってもそれほど勝ってないのではないか、と思われる。


 以上、考察をしてみた。
 参考にしていただければ幸いである。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Meanin Gless

Author:Meanin Gless
 初めてこのサイトを訪れた方へ(出来る限り御読みください)

1 このブログで記載する内容と程度 

 このサイトは麻雀に関する調査結果・研究結果を調査過程・研究過程を含めて厳格に記述するサイトです。
 原則として、このブログの文章に「(数学・プログラムについて相応の知識・技術を持った人が)ここに書かれた文章の内容を再現し、文章の内容が正しいことを確認するために必要なこと」は総て記載していく予定です。
 もちろん、牌譜分析をした結果をそのまま表示する場合、重複する場合、後で細かく書く場合、他に書かれていて書く必要がない場合、情報の速報性を重視する必要のある場合は別ですが、それはあくまで例外です。

 このブログの文章の第一のターゲットは、後世の麻雀研究者になっております。
 次が、巷に流れる麻雀戦術が正しいのかを知りたい人、理由付きで麻雀戦術を知りたい人になります。
 申し訳ありませんが、麻雀戦術が使えるようになりたい、麻雀戦術を分かりやすく知りたいと思われる方は、このサイトの99%は役に立たないと思います。
 麻雀戦術について詳細に記したサイト、分かりやすく記したサイトは、たくさんありますので、そちらを読まれた方がよいかと思います。


2 分かりやすさへの配慮について

 なお、理想論としては、私は、このブログの文章の内容を分かりやすく説明するところまでもっていきたいとは思っております。
 しかし、それだけの余力は現在ありません。
 そのため、「この記事を理解すれば役に立ちそうだから、このブログの解説記事を作ってほしい」と思われた方は、コメント欄にてリクエストをしてください。
 リクエストされた時の私の状況にもよりますが、出来る限り対応したいと思います。


3 当サイトの目標

 当サイトは「科学する麻雀」の理論を発展させることを目的としております。
 もちろん、発展の中には、「細かい修正」も入りますが、できれば、天鳳の赤アリ麻雀の牌譜を分析し、必要であれば、抜本的な理論の改変も目標にしたいと思います。
 また、「科学する麻雀」には秋刀魚に関する記述が乏しいため、秋刀魚に関する分析もしたいと思っております。
 その辺の研究が一通り終わりましたら、数理的裏付けの取れたある程度分かりやすい麻雀戦術記事を書きたいと思っておりますが、、、それは1年以上あとの話になるでしょうね。

4 引用について

 基本的に、ネット上のブログに引用する際には、

 ① 私がシミュレーション又は牌譜解析したこと
 ② このサイトのデータである旨

を書いた上で引用する限り、自由に引用していただいて構いません
(ただし、あたかも私が行った牌譜解析・シミュレーションを自分がやったかのように記載して転載するのはやめてください)。

 しかし、

 ① 営利目的使用
 ② 紙媒体に使用する場合

 は、コメントにて、私にご一報ください。
「① 私がシミュレーション又は牌譜解析したことの記載、②このサイトのデータである旨の記載」さえあれば、拒否することは致しませんが、私に再試の機会を与えていただきたいと思っているためです。

 引用について、このようなことを書くのもはばかられますが、某所でちょっとありましたので、このようなことを認めさせて頂きました。
 ご理解いただければ幸いです。


 では、よろしくお願いします。

カテゴリ

アクセス数