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安定段位と高段位タッチ試合数の関係

(結論だけ見たい人は1と4と5を読めばいい)


1 1000試合の九段タッチはすごいのか?

 先日、ツイッター上にてとある鳳凰民(註1)が九段にタッチしたことを報告していた。
 そして、そのツイートを見たとある人が「これってすごいことではないか」という趣旨のツイートをした(註2)。
 そこで、九段にタッチしたことを報告するツイートを見たところ「試合数が約1000試合」になっていた
 つまり、この人は新キャラを作って約1000試合で九段にタッチしたことになる。

 このツイートを見て、「これってすごいことではないだろうか?であれば、その裏付けを取ることができないだろうか?あるいは、そのすごさを定量化することができないだろうか?」と疑問に思った。
 そこで、高段位タッチ試合数と実力の関係を合理的に説明することを試みてみる。


2 考え方

 例えば、「安定段位7.0段の人間が新キャラを作って1000試合以内に十段にタッチできる確率が1%以下であった」と言えるとしよう(これはたとえである、正確な数値は下にて参照)。
 とすれば、この理屈から「安定段位7.0段の人間は1000試合以内に十段タッチできる可能性は低い」と言え、そのことと「(にもかかわらず)そのプレーヤーは1000試合で十段にタッチした」という事実から、「そのプレーヤーは安定段位7.0より上である」と言える(厳密には可能性が高い、ではあるが)。
 このロジックを使えば、その人の高段位(九段・十段・天鳳位)初タッチ試合数からその人の安定段位の範囲を推測することができる(註3)。
 そこで、安定段位と九段タッチ試合数・十段タッチ試合数・天鳳位試合タッチ数の関係をみてみよう。


3 調査方法・「可能性が低い(高い)」の具体的基準

 まず、「安定段位7.0段等の人間が新キャラを作った後に1000試合以内に九段にタッチできる確率が1%である」という基準をどこから持ってくればいいだろうか?
 それについては、段位変動シミュレーションを使用する。
 もちろん、あのシミュレーションは特定1卓(例えば、鳳凰卓)で打つことを主として、残りの卓で打つことは補充的に考えているが、大雑把に見積もるのであれば問題なかろう。
 なお、プレーヤーの打つ卓については一律東南戦とした。
「上卓までは東風戦で、特上以上は東南戦で打つ」とかあれば、この数値がぶれるのであれだが、今回のプレーヤーの成績ログを天鳳牌譜解析でみたところほとんど東南戦であったこと、東風戦と東南戦の実力変換公式が出来てない現在においては、これでも問題ないだろう(今回は目をつむる、今後の研究課題と言えよう)。

 次に、「可能性が低い」というラインをどこに設定すればいいだろうか
 この点、可能性を下手に高めれば、「たまたまそうなった」場合をより多く許すことになる。
 他方、下手に可能性を下げれば誤差が広くなってしまい、「何も言えない」ということになる。
 さらに、下手にこの基準を場面によって変えてしまうと、「この人は自分の採りたい結論にあわせてラインを設定しているのではないか」と思われかねない
 そこで、全分布のうち95%に収まる範囲の外側(上2.5%にはずれる、下2.5%に外れる)にあることを持って「可能性が低い」と定義することにする(安定段位関係でばらつきの範囲を求める場合、私は上下に2σをその範囲としているが、その場合と同じである)。
 大雑把に考えれば、「2.5%以下であることをもって『可能性が低い』と考える」ことになる。
 ただ、平均値と標準偏差から2.5%のラインを見積もるのはあれである(正規分布であればそれでいいがそうでない場合はそうもいかない)。
 そこで、段位変動シミュレーション結果から得られた生の九段到達試合数から上位2.5%のライン、下位2.5%のラインを具体的に求めてみることで、「可能性が低い」と言えるラインを作る


4 結果

 プレーヤーの安定段位(順位分布は1位から4位までが等差数列になるように採る)と九段タッチ試合数の関係(具体的には、九段タッチ試合数・十段タッチ試合数・天鳳位タッチ試合数の平均値、九段タッチ率・十段タッチ率・天鳳位タッチ率が97.5%となる試合数、九段タッチ率・十段タッチ率・天鳳位タッチ率が2.5%となる試合数)を調べてみた。
 結果は次の表のとおりである。

FC21612251.jpg 

 表の見方を説明する。
 今回は鳳凰卓・東南戦の平均順位が2.35~2.525のケースについて(平均順位は0.025刻み、順位分布は1位から4位が等差数列になるように採る)、九段タッチ試合数・十段タッチ試合数・天鳳位タッチ試合数について書いている。
 平均というのは、シミュレーションから得られた九段タッチした試合数の平均値である。
 例えば、安定段位7.0の九段タッチ率の平均値は6421試合になっているが、10000試合のシミュレーション結果として、九段タッチ率の平均値は6421試合ということである(なお、1億試合以内に到達した確立が100%になってないケースはこの数値は掲載していない)。
 次に、下限というのは、シミュレーションから得られた九段タッチ試合数を元に、九段タッチ率が2.5%になるラインを示したものである。
 例えば、安定段位7.0の九段タッチ率の平均値は832試合になっているが、これはこのシミュレーションの結果、832試合以内に九段にタッチできる可能性が2.5%である(なれる可能性が低い)ことを意味する。
 最後に、上限というのは、シミュレーションから得られた九段タッチ試合数を元に、九段タッチ率が97.5%になるラインを示したものである。
 例えば、安定段位7.0の九段タッチ率の平均値は21501試合になっているが、これはこのシミュレーションの結果、21501試合以内に九段にタッチできる可能性が97.5%である(なれない可能性が低い)ことを意味する。


5 考察

 さて、シミュレーションの結果から、n試合以内に九段・十段・天鳳位到達する可能性が非常に低い場合(到達する可能性が2.5%)と到達しない可能性が非常に低い(到達できる可能性が97.5%)場合が分かった。
 そのことから何がいえるかをみてみよう。

 公式は次のとおりである(断定形になっているが、厳密に書けば「その可能性は高い」になる)。

「安定段位AのB段タッチ試合数の下限がC試合であった」
「とあるプレーヤーは新キャラを作って東南戦で天鳳を打ち、C試合以内にB段にタッチした」
→ 「そのプレーヤーの安定段位はAより上」

「安定段位AのB段タッチ試合数の上限がD試合であった」
「とあるプレーヤーは新キャラを作って天鳳(東南戦)を打ったが、D試合以内にB段にタッチできなかった」
→ 「そのプレーヤーの安定段位はAより下」

 例えば、あるプレーヤーが東南戦で25000試合打ったが九段にタッチできなかったとしよう。
 他方、安定段位7.0の九段タッチ試合数の上限値は約21501である。
 よって、「そのプレーヤーの安定段位は7.0よりも下である」と言える(厳密には可能性が高い、だが)。

 他方、とあるプレーヤーが4000試合で天鳳位になったとしよう。
 他方、安定段位8.02の天鳳位タッチ試合数の下限は約5000試合である。
 よって、「そのプレーヤーの安定段位は8.02よりも上である」と言える(厳密には可能性が高い、だが)。

 このように、高段位タッチ試合数から幅はあれども一定のことが言えるのである。
(もちろん、なんとも言えないこともある、麻雀が運ゲーであることを照らせばそれはやむをえない)。


 さて、本題に戻る。
「約1000試合で九段タッチ」をどう評価すべきか

 まず、安定段位約6.5(平均順位2.525)である場合の九段タッチ試合数の下限は1207試合となった。
 約1200試合である。
 この人はこの試合数よりも少ない試合数(約1000試合)で九段タッチを達成した。
 このことから、この人の安定段位は6.5よりも高い、と言える。

 他方、安定段位10.5(平均順位2.35)における九段タッチ率の上限は1062試合となった。
 そして、この人の九段タッチ試合数はこの数値よりも下であった。
 このことから、この人の安定段位は10.5よりも低い、と言える。

 ということで、この人の安定段位は95%程度の確率で6.5~10.5の範囲にあるといえる。
「確実に言える」範囲で物事を述べるのであれば、「特上民ではない」までしか言えないようである。
「この人の安定段位は9.0クラスである(かなりすごい)」と断定するにはいかないようである(もちろん、九段タッチ試合数の中央値から見た結果、50%以上の確率で安定段位8.02以上である、50%以上の確率で安定段位8.58以下である、というようなことはいえるが、この予想は2回に平均1回は外れるのであてにならないであろう)


6 補足

 以上、天鳳のとある結果からその人の実力を見積もる方法について考察した。
 この方法を用いることで、「n段で高段位(九段・十段・天鳳位)にタッチした」ということから一定の範囲でこれ以上の実力であると言うことが可能になった。
 
 なお、注意事項としていくつか述べる。
 まず、新キャラをたくさん作る人間についてはこの理を用いてはならない、ということである。
 安定段位7.0の人間が900試合以内に九段にタッチする確率は約2.5%だが、これを20回繰り返せば、1つ以上のアカウントで九段にタッチできる確率は約40%になる。
 そのうちの1つを取り出して、「だから私は安定段位7.0よりも上だ」と主張するのはよろしくないだろう。
 安定段位の標準偏差を用いて安定段位の上限・下限を見積もる場合に、「いいところを引き抜いて計算してはならない」と述べたが、この方法で成績を見積もる場合も新キャラを大量に作ってチャレンジしてはならない。

 あと、途中で打ち方を変えた場合はこの基準を使うことはできない
 例えば、5000試合程度まで打ち方Aを用い、その後、打ち方Bを用いて7000試合で天鳳位になったとしよう(また、こんなことは頻繁に生じうるであろう)。
 この場合、打ち方Aと打ち方Bが混ざっているので、ここから何か言うのはあまりよくない。
「個人の実力をその全体の成績をもって判断する」とするなら格別、自分のために自分の成績について色々検討する場合はこれは不毛である。
 この場合は、素直にAとBを分けて、試合数と順位分布から安定段位の下限を求めたほうがよいかと思う。


 最後に、私は色々と麻雀の成績を実力を見積もる方法について書いている。
 少し前に、鳳凰卓の試合数と順位分布(平均順位・安定段位)から実力(安定段位)の上限と下限を見積もる方法について書いた。
 また、いいとこ取りをしたい放題にした場合の実力の見積もり方についても研究する予定である。

 こう色々書くと、「どれを用いればいいのか」と思うかもしれない
 これに対する私の回答は「答えはない。どの方法にもメリットとデメリットがある。自分が使いやすいものを用いて調べればいい」である。
 ぶっちゃけ、「ころころ変えなければどれでもいい」とさえ思っている。

 そもそも、「実力とは何か」という問いに対してさえ、共通前提による答えはない。
 また、それぞれの方法にはそれぞれ長所と短所がある。
 なので、「自分がこれで実力を測る」と決めたなら、そのデメリットを考慮しながら使っていけばいいだろうと思う。


 では、この辺で。


(註1)
 この者は以前天鳳界を賑わせた者ではあるが、天鳳位でもなく(将来なるか否かはさておき)、プロでもない。また、この鳳凰民が誰かによって本文の検討内容が変わるわけでもない。そこで、それが誰かについては公開しない(その人のツイートは鍵がついていないので調べたい人は調べてみればいい)。
(註2)
 この人の発言について発言を引用するべきかと思ったが、この人の発言を突き止めれば、元の発言者が何者かが判明してしまうため、これも伏せる(麻雀界における「公人」の発言であり、こちらも鍵がついていないので、調べようと思えば調べられるが)。
(註3)
 もちろん、「1000試合毎に新キャラ」を作るということを繰り返せば、意味がないが、今回の人間についてはそのような事情がないようなので、問題はないだろう。
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 もちろん、牌譜分析をした結果をそのまま表示する場合、重複する場合、後で細かく書く場合、他に書かれていて書く必要がない場合、情報の速報性を重視する必要のある場合は別ですが、それはあくまで例外です。

 このブログの文章の第一のターゲットは、後世の麻雀研究者になっております。
 次が、巷に流れる麻雀戦術が正しいのかを知りたい人、理由付きで麻雀戦術を知りたい人になります。
 申し訳ありませんが、麻雀戦術が使えるようになりたい、麻雀戦術を分かりやすく知りたいと思われる方は、このサイトの99%は役に立たないと思います。
 麻雀戦術について詳細に記したサイト、分かりやすく記したサイトは、たくさんありますので、そちらを読まれた方がよいかと思います。


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 もちろん、発展の中には、「細かい修正」も入りますが、できれば、天鳳の赤アリ麻雀の牌譜を分析し、必要であれば、抜本的な理論の改変も目標にしたいと思います。
 また、「科学する麻雀」には秋刀魚に関する記述が乏しいため、秋刀魚に関する分析もしたいと思っております。
 その辺の研究が一通り終わりましたら、数理的裏付けの取れたある程度分かりやすい麻雀戦術記事を書きたいと思っておりますが、、、それは1年以上あとの話になるでしょうね。

4 引用について

 基本的に、ネット上のブログに引用する際には、

 ① 私がシミュレーション又は牌譜解析したこと
 ② このサイトのデータである旨

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(ただし、あたかも私が行った牌譜解析・シミュレーションを自分がやったかのように記載して転載するのはやめてください)。

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「① 私がシミュレーション又は牌譜解析したことの記載、②このサイトのデータである旨の記載」さえあれば、拒否することは致しませんが、私に再試の機会を与えていただきたいと思っているためです。

 引用について、このようなことを書くのもはばかられますが、某所でちょっとありましたので、このようなことを認めさせて頂きました。
 ご理解いただければ幸いです。


 では、よろしくお願いします。

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