記事一覧

わざ降段の合理性 2

 今回は前回の続き。

 前回、鳳南安定七段の八段0ポイント付近におけるわざ降段の合理性を検討した。
 そのシミュレーション結果は前回の記事のとおりである。
 結論のみを述べると、「(短期的な高段位タッチ率の観点から見ても)わざ降段には合理性を見出しがたい」となる。

 もっとも、この結果はたまたまの可能性がある。
 また、安定七段だと七段から降段して特上卓で打つことを考慮しなけれならず(シミュレーションによると15%程度は特上卓で打つようである)、そのことはシミュレーションにとってノイズになる。
 そこで、今回は別の条件でやってみようと思う。
 具体的には、鳳南安定八段の九段0ポイント付近におけるわざ降段の合理性を検討する


 シミュレーションの諸条件は次のとおりである。

 シミュレーションのサンプルサイズは10000である。
 プレーヤーの実力は鳳南安定八段とする
平均順位は2.45、順位分布は26.5-25.5-24.5-23.5、安定段位は8.02
 開始時のRATEは2180とする。
 開始時の段位ポイントは八段1600ポイント、九段0ポイント、九段200ポイントとする。
 試合数は100試合、300試合、500試合、1000試合、2000試合とする。
 その他の条件は前回のシミュレーションに従う(特上卓の平均順位は約2.28)。
(分からない点があれば質問されたい)

 
 早速、シミュレーション結果を見てみよう。
 諸々の状況における、高段位(十段・天鳳位)タッチ率、100試合後等における天鳳位になるまでに必要なポイントの平均値と標準偏差は次のとおりである。

 FC21612071.jpg 

 まず、十段タッチ率に注目してみよう。
 100試合以内における十段タッチ率は0%であった
 (シミュレーション上一度も十段にタッチできなかったことになる)。
 300試合以内における十段タッチ率は1.1~1.4%となった。
 500試合以内における十段タッチ率は3.7~4.2%となった。
 1000試合以内における十段タッチ率は11~11.2%となった。
 2000試合以内における十段タッチ率は24~24.4%となった。
 八段原点と九段降段間際、それぞれの十段タッチ率の差はそれほど多くはない
 それは、天鳳位タッチ率、100試合後の天鳳位になるために必要なポイントについても同様である(天鳳位になるために必要なポイントの平均値の差も標準偏差に比べればかなり小さい)。
 そう考えれば、今回の結果からも「わざ降段には合理性がある」とは言い難い


 今回と前回は共に安定段位の1段上におけるわざ降段の合理性について調べた。
 このようだと、安定段位の2段上におけるわざ降段の合理性も大差ないだろう
 そう考えると、短期的に見たとしても「わざ降段には合理性が乏しい」と言えそうである。
 まあ、段位ポイントが0ポイント近辺だと急に安定RATEが53(平均順位0.05、安定段位に換算すると約1)下がり、降段して原点付近になったとたん元に戻るというのであれば別だが。


(以下、余談、わざ降段以外興味がない人は読み飛ばしてよい)

 ところで、安定八段において2000試合打ったときの特上卓で打った試合数の平均は約30試合となった。
 とすれば、シミュレーションにおいてプレーヤーはほとんど鳳凰卓で打っており、特上卓で打つことはほとんどない。
 そのため、天鳳位までの必要なポイントの平均値は5400に収束すると思われた。
 ところが、結果はご覧のとおり5400に収束する気配はない(同じ傾向は前回のシミュレーションでも示されている)。

 当初はシミュレータのバグかとも思ったが、その他の値(安定RATE、安定段位その他)はパラメータ通りの結果になっている。
 また、天鳳位までの必要なポイントの計算式も間違ってない。
 さらに、安定七段の際にも似たような現象が見られている。
 となると、これは間違ってない可能性が高い。

 どうしてこのような結果が生じるのだろう。
 現時点では明確な回答はない。
 想像(妄想)するのであれば、「段位ポイントは半分の確率で増え、4分の1の確率で減る」ことが影響しているようにも思われるが、この辺りは分からないというのが正直な感想である。
 これについては保留しておく。


 あと、ツイッターにて「特上卓における安定RATEと鳳凰卓における安定RATEは同じとする」という条件に異議を述べている者がいた。
 この点についても、「(仮定の妥当性については)正直なところ分からない」としか言えない。
「場所によって安定RATEが変わらない」ということについては、10年以上昔にとつげき東北が言及している(とつげき東北HPにある「麻雀問答」 http://totutohoku.b23.coreserver.jp/hp/mjm.htm の「5)なぜR2000以上が増えたの?」参照)。
 安定RATEについてはそのようなことが言えるらしい(もっとも、ちゃんと再試する必要があるが)が、安定段位についてこの関係にあるかどうかは分からない。
 また、安定RATEは鳳凰卓・特上卓の両方の成績から求められる数値だが、安定段位は特上卓と鳳凰卓で別個に求められる数値である。
 そこで、「卓毎の安定RATEを一致させる」という仮定を採用した。

 無論、こうすることで特上卓の安定段位の方が鳳凰卓の安定段位を一致しないという不都合が生じる。
 しかし、このシミュレーションでは「鳳凰卓で打てる限り、鳳凰卓で打つ」という仮定を採用しており、特上卓、あるいは、上級卓で打つのは補充的な扱いになっている。
 また、安定七段が2000試合打った場合、うち特上卓で打つ試合数は約300試合、全体の7分の1程度であり、それほど大きくない(安定八段の場合は30試合程度でありもっと少ない)。 
 そのことを考慮すれば、この仮定を採用したことによる弊害はさほど大きくはないものと考えている(異議があるものはこの仮定を変更して自らやってみよ)。 

(以上、余談終わり)


 以上、わざ降段の合理性について色々検討してみた。
 今回のシミュレーションから言えるのは、「わざ降段が合理的であることを裏付ける数値は出てきていない」である。

 この点、本来なら安定八段の十段から九段への降段間際(安定七段の九段から八段への降段間際)におけるわざ降段の成否を調べた方がよいようには思うが、前回・今回の結果をみるとやる気がしない。
 これらは「わざ降段は合理的である」と思う側が再試することによりご確認されればよろしかろう(この点、「合理性がない」という側が総ての事象について調査・立証するのは悪魔の証明を行うようなものであり、それ自体不合理である)。
 そもそも、これらの記事は、以前、私が「2000試合単位のレベルでみた場合にわざ降段には合理性がない」と主張した際に、とある麻雀プロが「2000試合で考えても意味がない。スパンが長すぎる」という反論を受け、シミュレータを作り直して再度調査しなおしたものである。
 そのため、この辺でこの話は終わらせたい。


 では、今回はこの辺で。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Meanin Gless

Author:Meanin Gless
 初めてこのサイトを訪れた方へ(出来る限り御読みください)

1 このブログで記載する内容と程度 

 このサイトは麻雀に関する調査結果・研究結果を調査過程・研究過程を含めて厳格に記述するサイトです。
 原則として、このブログの文章に「(数学・プログラムについて相応の知識・技術を持った人が)ここに書かれた文章の内容を再現し、文章の内容が正しいことを確認するために必要なこと」は総て記載していく予定です。
 もちろん、牌譜分析をした結果をそのまま表示する場合、重複する場合、後で細かく書く場合、他に書かれていて書く必要がない場合、情報の速報性を重視する必要のある場合は別ですが、それはあくまで例外です。

 このブログの文章の第一のターゲットは、後世の麻雀研究者になっております。
 次が、巷に流れる麻雀戦術が正しいのかを知りたい人、理由付きで麻雀戦術を知りたい人になります。
 申し訳ありませんが、麻雀戦術が使えるようになりたい、麻雀戦術を分かりやすく知りたいと思われる方は、このサイトの99%は役に立たないと思います。
 麻雀戦術について詳細に記したサイト、分かりやすく記したサイトは、たくさんありますので、そちらを読まれた方がよいかと思います。


2 分かりやすさへの配慮について

 なお、理想論としては、私は、このブログの文章の内容を分かりやすく説明するところまでもっていきたいとは思っております。
 しかし、それだけの余力は現在ありません。
 そのため、「この記事を理解すれば役に立ちそうだから、このブログの解説記事を作ってほしい」と思われた方は、コメント欄にてリクエストをしてください。
 リクエストされた時の私の状況にもよりますが、出来る限り対応したいと思います。


3 当サイトの目標

 当サイトは「科学する麻雀」の理論を発展させることを目的としております。
 もちろん、発展の中には、「細かい修正」も入りますが、できれば、天鳳の赤アリ麻雀の牌譜を分析し、必要であれば、抜本的な理論の改変も目標にしたいと思います。
 また、「科学する麻雀」には秋刀魚に関する記述が乏しいため、秋刀魚に関する分析もしたいと思っております。
 その辺の研究が一通り終わりましたら、数理的裏付けの取れたある程度分かりやすい麻雀戦術記事を書きたいと思っておりますが、、、それは1年以上あとの話になるでしょうね。

4 引用について

 基本的に、ネット上のブログに引用する際には、

 ① 私がシミュレーション又は牌譜解析したこと
 ② このサイトのデータである旨

を書いた上で引用する限り、自由に引用していただいて構いません
(ただし、あたかも私が行った牌譜解析・シミュレーションを自分がやったかのように記載して転載するのはやめてください)。

 しかし、

 ① 営利目的使用
 ② 紙媒体に使用する場合

 は、コメントにて、私にご一報ください。
「① 私がシミュレーション又は牌譜解析したことの記載、②このサイトのデータである旨の記載」さえあれば、拒否することは致しませんが、私に再試の機会を与えていただきたいと思っているためです。

 引用について、このようなことを書くのもはばかられますが、某所でちょっとありましたので、このようなことを認めさせて頂きました。
 ご理解いただければ幸いです。


 では、よろしくお願いします。

カテゴリ

アクセス数